赤ちゃんを産んだ。
赤ちゃんは自分の中のエネルギーを全て吸い取って出ていった。30年以上かけて自分の中で大きくした元気玉を赤ちゃんが持って出ていった。
出産の痛み、身体の傷、慣れない入院生活。
抜け殻。というかもはや屍だった。
そんな心身ともに放心状態の中、赤ちゃんのお世話がはじまる。出産翌日の朝からはじまる。夫は出産日に家に帰宅、翌朝も面会時間まで一息ついたのかもしれないが、こちらは翌朝からお世話が始まっているのだ。
産院のスタッフがすごくサポートしてくれるし、安くない入院費、新生児の管理費を払っているので、産院に存分に甘えた。初産婦とは思えない程、頑張らずにスタッフに甘えた。アラサーなので無理をしない、対価を払ってサービスを受け取るスキルは出産の時にも役に立った。
しかし、母乳だけは待ってくれない。
朝・夜は全く関係なく3時間毎に起こされて、授乳をする。わかっていたようで、あまりわかっていなかった。
夜間、赤ちゃんを預かってもらって直接授乳しなかったとしても、搾乳(さくにゅう)をさせられる。あえて「させられる」と言うが出産直後から母乳は出るようになるが、自動的にピューと出てくるのではない。しっかり乳腺を刺激し続けないと出ないのだ。産後直後からしっかり刺激をして母乳が出る道を開通させないといけないらしい。レンコンの穴を作る感じで。そんで産後2〜3日以内くらいにでる黄色っぽい初乳が赤ちゃんの免疫に「大変重要」らしい。そんなこと言われたら頑張るしかない。
もう一度言おう。母乳は自動的には出てこない。能動的に分泌をしようと取り組まないと出てこないのだ。産後のズタボロの身体で積極的にに母乳を出す練習をしなくてはいけない。シャトルラン20本やったあと、筋トレ5セットやるようなものだ。しかも3時間おきに。本当はずっと休んでいたいのに。
あとから知ったが「出産よりも母乳が大変だった」という人も少なくないらしい。私は出産の方が大変だったが、たしかに産後のトラブル&メンタルを削ってくる要因にもなったので、熱量多めに書いておく。

出産直後、ベッドでくたばっているところに助産師さんが乳を刺激しにくる。眠い。乳首が痛い。痛すぎる。ちぎれる。あぁ眠い。出産の傷も痛い。助産師さんも「ごめんねぇ。痛いよねぇ。」とか言いながら、グイグイ搾る。搾るというかつねられている感じだ。さっきも言ったが、開通されるためにしっかり刺激しないといけないようだ。片乳5〜10分、両乳で20分くらいだろうか。これが毎日3時間おきにやってくる。こちらはすでに瀕死状態なのに、追い打ちをかけられる。やめてライフはもうゼロよ。
※たぶんこの産院は母乳を大事にしているので、スパルタ寄りだったと思う。やっていることはスパルタだが、スタッフさんは全員優しかった。スタッフさんのおかげで「赤ちゃんのためなら」と抜け殻も一緒に頑張れた。スパルタのおかげで、授乳についての知識と搾乳などのスキルは入院期間中にたたき込まれ、退院時にはしっかり母乳も出るようになっていた。さすがスパルタン。
産後のメンタルは不安定だ。
慣れない病院で、出産の身体のダメージをもろに受けた身体で、赤ちゃんのお世話をする。おまけにはじめての授乳、乳首が痛い。服が擦れるだけで痛い。そもそも、見ず知らずの人に股を広げて観察をされて、お胸みますねと胸や乳首をめちゃめちゃ触られることも戸惑った。相手が医療従事の方で同性とはいえ、人生初の出来事に小さなダメージがどんどん蓄積していく。夜中は赤ちゃんを預けていても、病院の「ピピーピピー」というゾワッとする音が廊下の方から聞こえてくる。ようやくウトウトしたと思ったら「トントン」と搾乳で起こされた。
夫は面会時間が終わる頃に笑顔で帰っていく。面会にくる親族も幸せいっぱい。「おめでとう」とたくさん言ってもらった。病室でコットの中ですやすやと眠る赤ちゃんと2人きりになった時、目の前にいる新生児を育てられるだろうか、と本気でブルーになった。それと同時に、この幸せいっぱいの時に頑張って産まれて来てくれた我が子に対してそんなことを思うなんて自分は最低だ、とさらにブラックな気持ちになった。出産直後、まわりの祝福と自分の心と身体がついていかず、気分がガーーンと一気に急降下した。
たまたま私の様子に気づいてくれた病院のスタッフさんに助けられた。家族にも話を聞いてもらい平常心を取り戻した。「いや〜ブルーになってたわ〜」と退院までにメンタルを取り戻した。
あの時、早めに気づいてもらえてよかった。無理して平気なフリをしなくてよかった。あのモヤモヤを抱えたまま退院し育児をスタートしていたら、もっとひどい状態になっていたかもしれない。さすが、助産師さんは母性のプロだ。
義実家での里帰り中も、いつもより神経質になっていたと思う。ブログにも書いているが、細かいことが気になってしまう。イライラしてしまう。
自宅に帰ってからも、赤ちゃんの夜間の授乳や、赤ちゃんのまだ整っていない生活リズムに慣れるのには時間がかかった。夜も赤ちゃんが気になって起きてしまう。そんな睡眠不足の中、ギャン泣きされるとグッタリした。
あ、そうだった。
私の普通はこんな感じだった。と心身ともに感じられたのは産後4ヶ月ころだった。イレギュラーが起きてもさほど気にしない。考えすぎない。あれ身体もなんか軽くなってる気がする。(今までが重かっただけ)外出したら気分も晴れる。約1年ぶりに味わう感覚だった。この当たり前のことが、約1年間わからなかった。「あの時は考えすぎてたなー」と思えるようになっ。
私はこの感覚を思い出したのは産後4ヶ月だったけど人によって1ヶ月の人もいれば、数年かかる人もいるだろうし、なかなか戻ってこなくて大変な思いをしている人もいると思う。というか命と魂をかけて出産し、元気玉を吸い取られているので、元の自分には戻れないと思った方がいい。新しい自分になってしまう。べつに新しくなりたかったわけではないのに、なかなかあの時の自分には戻れない。下腹は出たままだし、傷もまだ少し痛む。抜け毛もすごい。なんか疲れやすい。でもパッと見の外見は元に戻っているので、この大変さは自分にしか分からない。周りのみんなは目の前のかわいい赤ちゃんに夢中。もちろんそれで良いが、妊婦で産後だった私はみんなに忘れ去られているので、とにかく自分で自分を労るしかない。元に戻ろうと思わないほうがいい。産後バージョンに進化したのだ。
妊娠、出産、産後は通常ではない状態なので、大事にしないといけない。
自分も。まわりも。
本当にデリケートな時期だし人によって大きな差があるので、他人の経験談は全くあてにならない。私の話も参考にしないでほしい。
